南海の深場に潜むカンパチは、世界中の熱帯~温帯海域に分布するアジ科ブリ族最大の魚です。最も大きなものでは、体長2m・体重80kgクラスに達すると言われ(100kgもいると言われている)、海の大物を狙うアングラーにとって憧れの魚となっています。釣り人の間では、ブリ、ヒラマサと並ぶ「青物御三家」の一角に位置づけられますが、ここまで大きく育つのはカンパチだけです。ムロアジ、イカナゴ、アジ、イワシ、サバなどの小魚のほか、頭足類や甲殻類も好んで捕食する曲型的なフィッシュイーターながら、大型ほど警戒心が高く簡単には食ってこない手ごわさも備えます。カンパチは大きくなるだけではなく、その圧倒的なパワーに特徴があります。ブリやヒラマサよりも体高があり、魚体は全体に丸みを帯びた太い砲弾型です。そしてハリに掛かったあとは、磯や根に向けた下方向への強烈な突っ込みを見せます。10kgを超えればそのパワーは恐ろしさも感じるほどで、そした南西諸島や沖縄では、それをはるかに上回る40kg、50kgというクラスも釣られています。名前の由来は目の上を斜めに走る褐色の帯。正面から見ると「八」の字に見えることから、カンパチと呼ばれるようになりました。ただ、この八の字は成長とともに薄くなっていきます。全体に褐色がかっており、くすんだ色合いと精悍な面構えも特徴です。カンパチは主に水深20~70mに生息しているとされてきましたが実際にはさらに深い100~300mの場所でも釣られています。この遊泳層の広さもブリやヒラマサに見られない特徴で、泳がせ釣りという生きエサによる大物狙いのほか、重たいジグを深場に落とし込んでアクションさせ、その刺激で食い付かせるジギングでも好対照魚となっています。深場のカンパチ狙いは、速く強くが基本とされ、他の対象魚を狙う、ジギング以上に釣り人の体力やテクニックが試されます。その難しさもまた一尾の価値を高めています。